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アツアツだよ(´・ω・`)

モテるようになったら人を好きになれなくなっていた僕の話~ルポ中年童貞を読み返して

久々にルポ中年童貞を読みかえした。この本を読むと恋ができていた頃の自分を思い返し、その痛々しさに打ちのめされるとともに恋ができなくなった自分の事を嫌でも思い出させられる。

本書に登場する人はいわゆる30-40歳にもなっても童貞だという人々だ。彼らの属性はオタク、理系コミュ障、介護職、ネトウヨと、まあある程度は理解可能な職種の人が多い。とはいえ僕の心を打ちのめすのは彼らの職種とか属性ではなく、その恋愛の仕方なのだ。

童貞というか女慣れしていない人の恋愛というのは非常にわかりやすい。簡単にいえば、優しくしてくれた女の子にすぐ一目惚れしてしまうのだ。彼らは優しくされた事がないので、優しくされる≒自分に好意があると捉えてしまう。その結果、その人に惚れてるのが声とか態度に出てきてしまう。そしてそれはすぐに周りにバレる。断言するが彼らは間違いなく、恋した人には好かれない。勇気がなくてそのまま何も言い出せずにいつか自分の元に転がり込んでくれるかもしれないという待ちの態度を継続する人もいれば(はっきりいっておくが99%の確率で女の子はあなたに振り向かない。オタサーでよくある光景だ)、特攻隊よろしく告白する人もいる(99%の人が振られる)。こういった態度を恋愛工学では非モテコミットメントと表現し、ピックアップアーティストという米国のナンパ技法ではオンリーワン中毒と言いあらわした。彼らが何故報われないかというと、一言でいえば彼らはキモイのだ。それを端的に言い表したのが二村先生の名著である全てはモテるためであるだ。

では逆説的な話だけど、モテるためにはどうすればいいのか。簡単な話だ。キモくならなければいいのだ。じゃあ実際問題どうすればいいのかというと、結局のところ相手の事を好きになってはいけないという事になる。水野先生のLOVE理論ではこれを同時に複数の女の子を攻略すればいいというようにしている。でも僕は思うのだ。そこに愛はあるのだろうか。

僕自信の話だけど、僕も昔は一目惚ればっかりしていた。街であるく美人な女子高生を見つけては通学路ギリギリまで追跡してどこの学校かを割り出そうとしたりしたし、予備校で可愛い女の子を見ればどうやって話しかけようか悶々しつづけた。キモイだろ。でもこれが恋だと思うんだよな。大学に入ってからも一目惚れの癖は抜けきらず、すぐに態度にでてしまうような輩だった。告白しては壮大に振られ、翌日には知り合い全員にバレるといった、今考えると笑い話だけど当時は鬱になるような辛い出来事もあったし、その後もいろいろと一目惚れを繰り返しては態度にでてしまい、相手にキモがられる事の連続だった。医大生だって事をいえばモテるかと思いバイトでそれを出したりもしたりしていた(結果から言うとむしろ逆効果だった)。そう、人を好きになるということはキモイのだ。

いうまでもなく僕は非常に悩んだ。こんなにも女の子が好きなのに、僕が好きな女の子は僕のことを全然好きになってくれない。こんなに頑張って医学部に入ってバイト代全額つぎ込んでファッションを勉強し、体を絞ってきたのに、全然報われない。そんな時にザ・ゲームにであった。女の子とSEXしたかったら相手を好きになってはいけないという、その教えは当時の僕にはあまりに衝撃的であった。とはいえ冷静に分析してみると、ようは好きだという態度が表にでるのがいけないのだという事はよくよく理解できた。その教えを守り色々と実践していってから後からは信じられないぐらいモテるようになった。今でも印象に残っているのは、ある繁華街で酔っぱらってたOLが道路ででんぐり返しをしていたときに「でんぐり返しするなら、一緒にもっと安全な場所でやろうよ」とか心底どうでもいいような声掛けをするだけで簡単に女の子が捕まえられた事だ。あんなに一目惚れを繰り返していた頃はキモがられたのに。そしてそういった彼女たちと体を重ねるにつれ、今度は逆に「どうしてこんなに好きなのに付き合ってくれないの?」という驚くべき言葉を頂くようになった。この時、女の子に告白なんてするのは下策中の下策であるという事を理解した。付き合いたい女の子がいるなら、先にSEXできるようにしたほうがよっぽどマシだという現実に気がついたのだ。そしてそうやってある程度モテるようになって気がついた。僕はキモくなくなったけど、思い返すと片思いをしていた頃と違って恋ができなくなってしまったな、と。

ルポ中年童貞の登場人物は非常に真摯だ。彼らは童貞に釣り合うのは処女だけだと心底信じているし、セックスはしたいけどソープにはいかない。何故なのか。それは彼らは恋しているからなのである。恋という行為は非常に独善的だし、相手の事なんて全然考えてない。そんな独善的な人間を、女の子が好きになるかというと断じて否だろう。でも経験則からいえるけど、スマートな大人風な格好いい男は人生のどこかの段階で恋を捨ててきてしまった男でもあるのである。そのことがいいかどうかはまた別だけど、彼らはもう人を好きにはならないだろう。だってそうすれば恋愛で負ける事は100%わかってるんだから。僕はこの本を読むたびに思い返す。あのかつてキモかった童貞の僕のほうが、今より100倍恋していたな、と。そしてキモさを捨てて相手と付き合うためには、恋という感情を捨てなければいけないというこの現代社会の矛盾を思い、今日もワインを傾けるのだ。