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珈琲をゴクゴク呑むように

アツアツだよ(´・ω・`)

日本を観光大国として復興するために必要な手法をグルメという視点から分析してみた

デーヴィット・アトキンスはその著書・新観光論でこう述べた。

 

 

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経済発展に必要なのは人口増加である。国内の人口増加が見込めない国は、移民によりこれを解決しなくてはいけない。

 

では日本のように移民を受け入れられない国が繁栄する為にはどうすればいいか?観光客という”短期移民”を多量に流入させ、金を落とすように仕向ければいい。

 

では観光客がバカンスを楽しむ先として、選ぶ基準点は何か。それは「気候」「自然」「文化」「食事」4つの要因である。これらが優れている事が観光大国になるための必要条件だ。

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詳しい内容は本書を読んでいただくとして、今回は『食事』にのみ論点を絞って書いていく事にする。

 

日本の外食の安さは先進国としては異常

ヨーロッパでもアメリカでもどこでもいいのだけど、先進国を旅した事がある人は現地のレストランの値段の高さに驚いたはずだ。町中のカフェに入ってコーヒーとサンドイッチを頼んだら平気で1500円ぐらいかかる。

 

レストランなんてもっと凄い。軽く食事をしただけで平気で3000円を超える。上級ラインはもっと凄く、3-5万なんて金額は当たり前のように請求される。

 

日本の食事事情は先進国としては異常だ。立ち食い蕎麦は200円もあれば食べられるし、大衆食堂は1000円もしない。3000~5000円も出せば随分立派なものが食べられるし、一万も出せばかつては貴族しか利用できなかったような高級レストランにだっていく事が可能だ。

 

おまけに美味しい。諸外国のレストランは現在でも死ぬほど不味いところがそこそこあるのに対し、日本では不味いレストランを探す方が困難だ。はっきりいうが、こんな国は他にはない。

 

安くてうまい。日本は食事という点では、十分観光大国になりうる潜在能力を有している。ミシュランの星も世界で一番多いこともそのことを十分に裏付けている。

 

だけどこれだけでは食の観光大国になるにはまだ不十分なのである。

 

同じフランス料理なら日本よりもフランスで食べたいよね

当たり前だけど、人は本物を愛する。どんなに上手くできた贋作も、本物にはかなわない。

 

もし仮に、あなたが”おいしいフランス料理”を食べるために旅行の計画を練ったとしよう。その時にフランス以外の国が選択肢に入ることはまずないはずだ。

 

はっきり断言するけど、日本のレストランのレベルは諸外国の本場の味と比較してもまったく遜色がない。いやそれどころかもっと美味しいかもしれない。

 

だけど外国人が”わざわざ”日本にフランス料理を食べに来るだろうか?日本のフレンチは本場と比べて半額程度で同じクオリティのものが出てくるけど、高い航空券と移動のためにかかる時間というコストは、数千円程度食事が安い事とは全くつり合いが取れていない。

 

もちろん『食事』以外の目的で日本を訪れた人からすれば、結果として日本の安くておいしい食事はありがたいものになるだろう。けどそれはあくまで副次的なものであって、食事で観光客を呼んでいるわけではない。

 

あなたはマチュピチュ遺跡やウユニ湖を見に行きたいと思ったときに、食事の美味しさがそこに行くかどうかの要因になるだろうか?正直メシがどんなに不味かろうが”そこ”に行きたいと思えるのなら行くはずだ。残念ながら安くて美味しいだけでは観光客を呼べないのだ。

 

日本が食事大国となり観光客を誘致するためにはどうすればいいか?

先もいったが観光客はオリジナルを愛する。どんなに優れた偽物も、本物には勝てない。

 

じゃあどうすればいいかなんて簡単だ。まず一つ目は、日本固有のものを売り出せばいい。

 

元からある日本料理や寿司、天ぷらなどといったものはそれだけで十分資産価値がある。ただ残念かな。私たち日本人は実は自国の料理についてほとんど詳しくない。日本料理の歴史、寿司の歴史、天ぷらの歴史。その素晴らしき魅力を語るための言葉を有していないのだ。

 

諸外国の人々が喜ぶような魅力をプレゼンテーションできずに、門戸を閉ざしてわかる人だけがわかればいいなんていう時代は終わった。人が物事にあこがれるキッカケは一つでも多い方がいい。もしあなたが外国人と話した際に”日本のいいところを教えて下さい”と言われたら何が言えるだろう?

 

寿司が美味しい?天ぷらが美味しい?そんなちゃちなほめ言葉では人は動かない。待ってましたといわんばかりに脳内で構築したストーリーを展開し、相手の心に憧れを刻み込む必要がある。

 

当然というか現場の人も全員が全員、この手の知識に明るいわけではない。我々庶民に加えて、すべての人が日本という国の食文化の教養を高める必要がある。観光PRをするのは観光庁だけの仕事ではない。私たち一人一人が教養を高めていく必要がある。

 

その他ジャンルの料理人はどうればいいのか

では今度は日本以外の料理はどうすればよいのかについてみていこう。残念ながら、フレンチもイタリアンも中華も日本の料理ではない。どんなに優れていても、本物ではないのだ。

 

じゃあどうすればいいのか?結論は一つしかない。元のジャンルを超えて、オリジナルになればいい。そうして他のどこにもない、日本初の全く新しい料理を作り出せばいい。

 

かつてスペインにエル・ブジというレストランがあった。分子ガストロノミーという手法により作られるその料理は、数々の美食家に驚きを与え瞬く間に世界一のレストランの階段を駆け上った。

 

エルブジの取った手法はゼロから生まれたわけではない。フレンチやイタリアンの技法を根底に、人口イクラや液体窒素といった科学的な手法を取り入れて、まったく新しい料理のスタイルを築き上げた。

 

この事から我々が学べるのは、本場を踏襲して作られたコピー料理も複数組み込んでオリジナリティを生み出してしまえば本物を超えるという事だ。じゃあどうすればいいか。そのために日本固有の料理以外の料理を作る料理人も、他分野のジャンルの教養を深く取り入れる必要がある。

 

フランス料理人ならまずはフランス料理の歴史を深く学びなおし、そこから自分なりのフランス料理哲学をくみ取る。そしてその抽出された哲学を自分なりに再解釈する。そしてそれを他分野でも行う。

 

武道には『守・破・離』という言葉がある。人はゼロからは何も生み出せない。まずは先人が残した遺産である基本の型を高速で身につける事で初めて人類が辿ってきたルートを身につける事ができる。

 

学問に王道はないというけども、それは習得するための手法の話であってある段階までの結論は一様だ。どんなに頑張ったって物理はニュートン力学相対性理論に行き着く。ならばそこまではテキストを用いて高速で学んだ方がはるかに効率が良い。

 

そうして最先端を身に着けたら、今度はそれまで身に着けた知恵や技術を用いてそれまでの常識という殻を破る必要がある。そうして自分で自在に新しい何かを生み出せるようになった時、初めて人はそれまで学んだものから自由になる事ができる。それははたから見ればまったく新しい何かだけど、キチンとそれまでの古典を踏襲したものなのである。

 

イノベーションはいつだって古典を踏襲した他分野の新規参入者によりもたらされる。スティーブジョブスは禅だとかカリグラフィーだとかの美意識という文化をシリコンバレーというIT文化に持ち込んだが故に、一見武骨でオタクなコンピューター業界に洗練されたカッコよさを導入する事に成功した。その結果、iMacMacBook Air、そしてiPhoneが生まれる事となった。

 

ワトソンとクリックも生物学を物理学的に解析するという手法を用いたが故に、それまで誰も解明できなかったDNAのらせん配列を見つける事ができた。その結果、従来の生物学とは異なる分子生物学が派生した。

 

他にもウォール街に物理学者が参戦したことでクオンツという新しい職種が生まれるなど、このような例は枚挙にいとまがない。

 

日本は美食大国だ。本場以上に本場の味を、より美味しく提供する事ができる稀有な国民性を有している。もう武道で言うところの『守』の段階は余裕で習得しているといっていいだろう。

 

だけどいまだに『壊』『離』が生まれない。なぜだろう。それは他分野の知識の習得がおろそかだからに他ならない。

 

今後日本が美食大国になるにあたって、他分野の教養を身につける事は必要十分条件なのだ。フランス料理人は天ぷらの歴史を勉強する必要があるし、イタリア料理人も寿司の歴史を学ぶ必要がある。

 

こうして高度な技術と幅広い教養を備える事に成功したとき、恐らく誰も見たことがない新たな美食が生まれる。そうして生まれた料理を美食家は大きな拍手をもって迎え入れるだろう。

 

そして日本は他のどの国も真似できない超ハイレベルな美食輸出国になる。そして外貨が多量に落とされるようになるだろう。そしてそのとき初めて、食の観光大国を胸を張って宣言できるのだ。その日を一メシ狂いとして楽しみにしている。

 

最後に手前味噌で大変恐縮だが、一般人向けに書いたイタリアン・フレンチ・日本料理・寿司・天ぷらといった美食のオールジャンルの入門書を最近ようやく書き終える事ができた。近々発表できると思うので、楽しみにしてください(できれば紙で出したいので興味ある出版関係の人は連絡ください。全部で13万文字ぐらいはあります)