珈琲をゴクゴク呑むように

アツアツだよ(´・ω・`)

普段会社で行われる年功序列の上に成り立っている勧善懲悪的議論にモヤモヤ感じている人へ~論理的にものを考えるという事はどういうことか~

人間じみた活をするにつけ、週休二日というのは偉大だと思います。どうもtakasukaです。では本日も一冊行きましょう。

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本書はじめて考えるときのように 「わかる」ための哲学的道案内 (PHP文庫) は論理トレーニングで有名な野矢茂樹先生の一冊です。論理トレーニングはお世辞にも気軽に読める本ではないので、普通の人はこちらがよいでしょう。

一時期いわゆる論理的思考とかロジカルシンキングというものが流行りました。事の発端は恐らくコンサルとかマッキンゼーブームだとは思うのですが、たぶん根底には機嫌で仕事をする人に対する多大なるあてつけがあったんじゃないかなあと思います。

その場では結構筋道たててものを話しているように聞こえる人も、樹形図を書いて議論が噛み合っているかどうかを分析してみると、驚く程論理が飛躍しているなんてことはよくあります。

具体的にいうと、A→B→CよってDみたいな筋道たてて物事を話せる人っていうのはまあ割といるのですが、結構Aの話をしている時に急にCの議論を吹っかけてきてその結果会話が噛み合っていないことなんていうのはよくあることです。

具体例をあげて説明しましょう。残業代を支払うのはお法律で決まっているのに多くの企業は法律を遵守していないという会話をした時に、でも残業代を支払っていると多くの企業は事業として成立しないという返事を返す人が沢山いますけど、この会話はあくまで法律を遵守していないという点を議論しているのであり、企業が成立するかどうかについての議題ではありません。

上の会話は

(A)残業代を支払っていない企業は法律を遵守していない

(B)→しかし多くの企業は慣習としてサービス残業という形態を採用している。何故か

(C)→それは企業として利益を上げるためには人件費をカットする必要がある。もし残業代をキチンと支払っていると多くの企業は事業として成立しえない

(D)→それが多くの企業がサービス残業という悪習を強要する文化といて根付いてしまった→ゆえに日本企業はどんどんブラック化してゆく。

といった一連の常識的思考回路が根底に置かれているからこそ成立する会話であり、初めにAについての議論をもちかけた人に対してCの話題を用いて反論するのは実は反則もよいとこなのです。

こういう日本的常識を用いた議論が堂々と行われる事にいごごちの悪さを感じている人がたくさんいて、それがロジカルシンキングとか論理ブームの根底にあることは恐らく間違いない事実だと思われます。ただまあこういうのはやはりマッキンゼーとかそういうきちんとした企業文化が根付いている所で行われる理想論であり、おそらくほとんどの社畜の皆さんは発言力とか年功序列がものをいう世界で今後も生きていかざるをえないでしょう。

本書はじめて考えるときのように 「わかる」ための哲学的道案内 (PHP文庫) はゼロベースでものを考えるという事がどういうことなのかを絵本のようにわかりやすく書いているという点で実に秀逸であります。なんか普段会社の勧善懲悪のように決まりきった議論を目にしてもやもやしている人は、これを読むとちょっと胸がすく思いをするかもしれません。実のところ読んだからってその会社を脱出できるわけではないのですが、次に目指す理想の世界がどういうものかを思い浮かべられるかもしれません。

まあ臨床医として人に生死とか説明するようになると論理的説明は実は全く人の心をとらえられず信用構築ができない事を痛感し、逆にそういう非論理的説明の大切さを実に良く痛感するようになるのですが、それはまた別の機会に話しましょう。