珈琲をゴクゴク呑むように

アツアツだよ(´・ω・`)

素人が作り出す奇跡

あたまがパーでやんす。takasukaです。今日も一冊行ってみましょう。

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本書同人王を知っている人はかなりのマニアでしょう。ちょっと前に流行した痴漢男(漫画ver)とかのフリーweb漫画のうちの金字塔のうちの一つです。

あらすじとしては俺はまだ本気出してないだけ、みたいな事を言っているニートな主人公が悪態をつきつつも現実的に努力を重ねて同人王を目指すというものです。

紹介文だと”「現代のトキワ荘(実家)」で繰り広げられる、「人(ニート)」が「人(壁)」になるまでの抱腹絶倒の地獄巡り! !”なんて煽られてますがなんというかこう、すごく心にくる漫画です。商業誌だと出にくい性質のね。

僕は結構windowsフリーゲームが好きなんですけど、何故かそういう金を取らない作品って商業用ゲームにはない不思議な面白さがあるんですよね。

なんでなのか腑に落ちなかったのですが、村上隆というまあ知ってる人は知ってる有名な芸術家さんが自身の本(これも実にいい本です)で述べられました芸術で生活する方法という記述を読んでからやっとこさ理由が少しわかりました。

村上さんいわく、芸術で生活するには欧米の富裕層に売れるような文脈というものを踏襲したうえで作品を売らなくてはいけない。そういうものを無視していくら自分がいいと思うようなものを作ったって、そもそも芸術のルールにのっていないので相手にされないと。

考えてみればワンピースにしろ進撃の巨人にしろ、普通に有名になる漫画というのは基本的には大手出版社を経ないと表にでられないわけです。そこでのチェックが入るということ自体が、ある程度商業用としてのルールという型の洗礼をどうしても受けざるをえません。

しかし本書同人王を含む、こういう大手商業ベースのルールチェックを受けずに世に出されてしまった作品というのは、こういう僕らの脳内に存在する商業作品として受けなくてはいけない作品としての通過儀礼を無視して生み出されます。

ほとんどの作品はその洗礼をうけないことによりそもそも表に浮かび上がれないのですが、本書のように何かの奇跡により表へ出てこれた作品というのは、商業誌が洗練を受ける過程で失われてしまった不思議な魅力を持つことがあります。

これこそがアマチュア作品が時として時代を変える秘密であり、こういう作品を見つけられた時に感じる喜びは何にも代え難い深い感慨があります。本作品はそれが商業ベースで出されるという奇跡の上に奇跡が出てくるという面白さがあります。是非手に取りその魅力を存分に味わってみてください。