珈琲をゴクゴク呑むように

アツアツだよ(´・ω・`)

レストランだけでなく、客側も正当に評価されるべき時代がやってきた~うどんが主食さん問題を考える~

有名食べログレビュアーである「うどんが主食」さんが飲食店側から過剰な接待をうけていたという事を告発されて炎上した。

 

bunshun.jp

 

実はうどん氏については2~3年前から有識者間で

 

「態度が悪い」

 

「味じゃなくてヨイショしたかどうかで高評価が決まる」

 

などなど色々と言われていたが、今回の文春砲により決定的に信用を失ったと言っていいだろう。

 

魑魅魍魎だらけのグルメ界

実はうどん氏に限らず、飲食店業界は珍妙な人がたくさんいる。その惨事については友里氏の本に詳しい。

 

グルメの嘘(新潮新書)

グルメの嘘(新潮新書)

 

 

以下簡素に問題点を書くとこんな感じである。

 

1.そもそもグルメライターは専業だと年収が300万程度である。

 

2.その年収で果たしてキチンとレストランを評価に値するほどまわれるのかというと、当然の事ながら不可能。必然的に、タダ飯を要求したり、予算をかなり厳しく制限して店側に特別料理を作らせるという事を行わざるをえない。

 

3.つまり、そもそも取り上げられている店が最初の段階で選別されてしまっている。結局のところ、本当に美味しいから紹介されるのではなくグルメライターに媚を売ったお店がメディアに出て、良心的なお店は見向きもされない。

 

まあこの他にも色々な指摘はあるのだけど、この時点でグルメ業界がいかに偏った状態にあるかがわかるだろう。うどんが主食さんのようなアヤシイ存在は氷山の一角でしかない。

 

食べログはある意味では画期的なサービスだった

そういう意味では食べログはかなり画期的なサービスだった。

 

もともと東京いい店うまい店、東京カレンダー、ミシュランといった、ある種の経済活動の元に成り立ったメディア媒体しかお店の宣伝がされるルートがなかったグルメ界において、なんのシガラミもない野生のグルメや素人の素直な意見がオープンネットワークに表出するというのは、革新的なイベントと言っても過言ではなかった。

 

もちろん評価者は素人が圧倒的に大多数なので、飲食のプロからみると「こいつ何も料理の事わかってねぇな」という評価をしている人も非常に多く散見されるという問題はあったのだけど。

 

これが原因で、レストラン側が素人による心無い発言により余計にイライラさせられるケースも多々あったのは事実だ。このあたりはなんというか申し訳ないという気持ちもかなりある(僕も専門である医療について、よくわかってない人からアレコレ勝手に言われるのは腹がたつので気持ちは非常によくわかる)

 

ただ総体としてはかなり食べ手のレベルが向上するのにも役にたったのは事実だろう。情報は、ゼロだと何も産まないが1でもあればそこから何らかの知見が生まれ得るものだ。食べログは、そういう意味では信頼できる食べ友達を持たない在野のグルメや素人に多大なる知見をもたらすキッカケとなっただろう。

 

だが悲しいことに、食べログもどうやらかつての駄目グルメを量産するツールとしての道を歩みつつあるようだ。いったいこれからのグルメ業界はどういう道を歩むべきなのだろうか。

 

美味しいものが食べられないのは、あなたの指示出しが悪いから

仕事というのは指示出し・下請け、どちらも優秀ではないとよい成果は生み出せない。

 

上司が無能でアサッテの方向を向いた指示ばかり出していたら部下は困惑するし、どんなに上司が明晰な指示を出しても部下があまりにも無能過ぎたら成果がでない。

 

実はレストランについても全く同じことがいえる。

 

レストランにおける成果物は料理だ。

 

客がシェフの得意な調理をキチンと把握し、食材の旬、自分の味の好みをキチンと把握した上で自分が美味しいと思えるものをキチンとシェフ側にオーダーできれば、同じレストランでも出てくる料理の質はガラッと変わる。

 

実はレストランで美味しい食事が食べられない問題は、かなりの割合において食べ手にも問題がある事は知られていない。

 

食べロガーが「あそこのレストラン、全然美味しくないわ」と言っている傍で、レストランもレストランで「あの客、なんもわかってねーよ」と言ってたりするのである。

 

これって無能な上司と無能な下請けの会話、そのまんまじゃないだろうか?

 

つまりレストランはレストランで「あの客の指示出しがクソだ」と言ってるわけで、客は客で「あのレストランは俺の要求を全くわかってない」と言ってるのだ。

 

これはある意味、双方の情報のやり取りがうまくなされなかった上に生じた不幸だと言えるだろう。

 

食べ手は美味しい食事という成果物が欲しい。けど正しい指示の出し方を知らない。

 

レストラン側は客がどういう食材を美味しいと思うのか、どういう調理を好むのか、という情報が欲しい。けどそれを知る手立てがない。

 

そろそろ客側もしっかり成長するべき

この点、食べログはある意味では素人客による要望の塊みたいなものである。もちろんというか、個別の客による要望ではないので、レストラン側が客側の要望を上手く汲み取るのにはかなりしっかりとした情報分析が必要だけど、そこにあるのはゼロではない。少なくとも1の情報がある。

 

ただ残念ながら、指示出されサイドであるレストラン側からの食べ手への評価はまだゼロだ。あなたの指示がどう悪いのか、逆によい指示出しをしてくる客というのは、どういう人間なのか、についての知見は、全くといっていいほど蓄積されていない。

 

グルメ界が次の段階に進む為には、そろそろ食べ手側もしっかりと成長しなくてはいけないのである。食材の旬の把握、調理方法、その他諸々の諸事情について、正当な情報のやりとり無しには私たちは総体としては一歩も先へすすめない。

 

というわけで食べ手→レストランへの評価が下されている「食べログ」の逆の、レストラン→食べ手への評価が下される「食べ手ログ」についての導入をカカクコムさんは真剣に考えて欲しい。

 

旨味はまだまだ先にいける。食べ手も作り手も、思うところはただ一つ。「美味しい」の一言なのだから