【スゴ本】人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか
人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)
さてスゴ本を見つけたので、簡単にご紹介します。
人の誘導されやすい行動を書いた名著として影響力の武器という本がありますが、こちらは人が影響されやすい思考のクセについて書いた名著です。
人は上手く生きていく過程で思考に優先順位を付けるという技能を進化させて行きました。例えば記事を読み解く際に、僕らは情報に優先順位をつけます。あの本は500pあるけど、大切な部分は初めの10pに全部載っている、という風に。
このように人間の独自性の1つとして、与えられた情報を全て等しく扱わず、取捨選別できるというものがあります(コンピューターはこれが出来ない。だからキュレーターという職業が成立する)
しかしその過程で同時にいくつかの欠点を抱え込むこととなりました。そのうちの1つである、肯定的事象にのみ注目を置きやすいという人間の思考のクセについて、図を用いて説明してみましょう。
デブ | デブでない | |
医者 | A | B |
医者でない | C | D |
人が何かしらの仮説を打ち立てるとします。例えばデブの医者(A)は犯罪を犯しやすい、という仮説をうちたてるとしましょう。するとそこには自然とそれ以外の3つのパターンが生じます。
ちょっと想像して欲しいのですけど、上記の図においてデブの医者(A)は非常に想像しやすい事例です。今すぐにでもこんなのが想像できるはずです。
しかし残りのB、C、Dはうって変わって非常に想像しにくいというのがわかるでしょうか?
Bのデブではない医者はまだしも
Cのデブの医者ではない人
Dのデブではない医者ではない人、となると最早言葉が何を意味しているのかも想像しにくいです。
人間は他の動物と違って「仮説を立てる→それを検証する」という事ができ、それが色々な科学的進歩を生み出しています。これ自体は否定しようのない素晴らしい事なのですが、その仮説は大概において先ほどの図で言う所のデブ医者(A)、つまり肯定事象×肯定事象のみに主眼が置かれている事が多いです。
この思考のクセを上手く流用すると、非常に大衆を扇動する事ができます。
例えばデブ医者は犯罪を犯しやすい→だからデブ医者は悪だ。という見出しの記事が週刊誌に載った時に、僕らはそもそもデブ医者(A)以外の他の事象についてに思考を巡らせません。
ひょっとしたらB、C、Dのどれかの事象により犯罪を犯しやすい傾向のある人がいるかもしれませんし、そもそも差なんて存在していないのかもしれません。
このように情報に優先順位をつけるという人間の性質は、コンピューターにはない想像力等の素晴らしいものを生み出してくれると同時に、時には罠となって僕らを襲いかかってくる事もあるのです。
本書、人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)はそういった事例を集めてわかりやすく解説してくれる稀有の書籍です。これ以外にも面白い項目が多数載せてありますので、是非手にとってみてはいかがでしょうか?
【この記事を書いた人→@takasuka_toki 】